吉原 多恋人倶楽部『森田涼花』ブログ

吉原 多恋人倶楽部で働く『森田涼花(もりたすずか)』のブログです。

  1. 鉄道紀行文
  2. cm: 2
  3. [ edit ]

ひたすらの放浪旅 鉄道紀行上信電鉄の旅なのだよ。


20200122081440a20.jpeg


時期は年が明けてまだまもない頃。
あんなに待ちわびていた筈の正月休みもいよいよカウントダウンが始まり、新年というのに少し憂鬱な気持ちであった。


冷たい風邪が吹きあられ身震いしながらも気持ちを紛らわせようと足を向かわせたのは、群馬県にある上信電鉄。

路線図でも高崎から伸びており、新潟に行く上越線。また埼玉のローカル線代表である秩父鉄道を横目にしれっと伸びている。言わば地味な路線である。



元々は上州と信州を結ぶ目的で作られたことからその名前が付けられているが、途中広大な山々を前にあえなく下仁田までに工事を打ち切られ現在に至る。






三ヶ日というのに人混みで慌ただしいJR高崎改札をクラクラしながらやっとの思いで潜り抜け、一旦駅舎を出たところにそのホームは設立されていた。




202001220814116c8.jpeg



静けさが漂い少し都会の雰囲気から忘れ去られたような上信電鉄の改札。
まるでスナックを思わせるような電子文字盤が異様な何ともシュールな雰囲気を醸し出している。



20200122081410da2.jpeg




窓口で1日乗車券を購入し、さっそくホームへ入ろうとすると 
懐かしのハサミでその乗車券に印を入れ、心地よいパチンという音と共に私の旅が開始された。




2020012208141251a.jpeg




昭和時代に主に普及されてきた木製のロングシートが哀愁帯びていて、たまらなく腰を掛けて電車を待つ。
乗車客は地元の人の他に、途中駅にある世界遺産にも登録された富岡製糸場へ向かう観光客もいるようで時間と共にそこそこ人が集まってきた。





2020012208140728a.jpeg




乗客たちを運ぶのは、2両で編成されたデハ251。
一応電化されているものの昭和56年に製造された古い車両である。
当時はタブレットを通過手形とした事から今もその名残として右側に運転席が設置されている。

昭和生まれの古い車両は、下仁田のネギの広告をちぐはぐに着飾りホームへ入車した。



202001220814065d4.jpeg



車内には子どもから大人まで地元で募集した絵画が一面に張り付けてあり非常に賑やかである。





豊富な絵画に辺りをキョロキョロと見渡しながら席に着くと、いきなり視界がすとーん!と落ちて一瞬体が硬直する。

はて、椅子を外す程そんなによそ見をしたかな?ともう一度立ってシートを見ると すこぶる椅子が低いのである。
おまけに体がよく沈むこと。勿論私の体重が重いだけが理由ではない。。。


20200122081400029.jpeg



電化されているとは言え、通常の鉄道と比べ遥かに遅いスピードで走り出し市街地から後半にかけては山沿いをノロノロと走り抜ける。

終点の下仁田駅までは約33.7km。
有人だった駅舎もそのうちプレボブ小屋と化し、半分席が埋まっていた車内は路線を真ん中まで通過した頃にはわずか10人足らずとなっていた。



20200122081441ad8.jpeg




タイムスリップをしたかの様に懐かしの木造駅舎の下仁田駅は関東の駅舎100選にも選ばれ設立100年の歴史を誇る。

周辺には地域の小さなコンビニがポツンとあるだけで先程下車した客は跡形もなく姿を消していた。木枯しの様に吹き抜ける風が余計に街の寂しさを掻き立てる。



2020012208143820d.jpeg



202001220814376f0.jpeg




さて、何処へ行こうか。

取り急ぎ駅前にあった周辺の地図だけを頼りに方向だけを決めて歩き出してみる。






通り道に意外と多く並ぶ民家は戦後のものだろうか。
木目が立派な二階建ての小さな一軒家が立ち並んでいる。

扉は横引き式のガラス窓。おそらく窃盗など無縁の世界なのだろう。
人の姿は見えないものの中からは親戚同士が集まった軽快な笑い声が漏れてくる。



20200122081435b63.jpeg




不思議と正月が生み出す人の暖かさに、たまらなく首に掛けていたネックウォーマーで口元まで上げてそそくさと歩くスピードを早めた。




しばらく歩き続けると川が見えて来た。
風邪や水の流れで奇妙な形に削れた広大な岩の下で地面が見えるほど透き通った水が美しい。

後から調べてみて分かったことだが、この場所は岩が青っぽく見えることから通称〝青岩公園〟と呼ばれているらしい。


20200122081432e21.jpeg



岩の正式名称は〝緑色片岩〟。
低圧・低温の影響により特殊に変化した岩で通常は庭石にも使用されているそうだ。

なるほど。どこか眺めているだけで気持ちが穏やかになってくるのはつまりそういう事なのだろう。




自然が作った庭園をボケーッと見ながら
慌ただしかった年末の記憶を成仏させるかのように頭を空っぽした。


下仁田まで来て、名所でもない川を見つめる旅の何処か楽しいのか疑問に思うだろうが
目的地を調べて観光するのは旅行であり、旅とは何も知らない場所で何かを見出すものなのだと私は思う。



202001220814315c8.jpeg




時々こうして意味もなく鉄道に揺られて、ふらふらとたどり着いた先で世間への皮肉を吐くのは十分に私らしい旅になっているはずだと言い聞かせ相変わらず当ては無くも、また歩き出した。



帰りに下仁田駅の前に立つ小さなコンビニで日本酒を買ってみた。


202001220814343a7.jpeg


群馬の森川酒造という蔵元が制作しているらしい。
珍しくあまり興味が惹かれないラベルであったが、せっかく来たのだからと試しに持って帰ることに。




帰りの電車でひと口飲むと、淡麗ではあるがどこか青くさい後味が印象に残る。

、、、まぁ、こんなもんだろう。

分かっていながら買った後悔はないが、、
旅と同じで酒選びもいつも成功するとは限らないのである。



味覚を酔いでごまかす様に口に含み続け、その足で上州一ノ宮駅で下車し、初詣に向かうのであった。




202001220813594fb.jpeg



  1. 鉄道紀行文
  2. cm: 5
  3. [ edit ]

鉄道紀行 平成筑豊鉄道〜筑豊電鉄の旅なのだよ。


20200114123235480.jpeg




東京と比べて、さらっとした冬の風が頬を伝う九州行方。

市街地福岡や小倉よりもはるかに人が少なく、年末休みも始まった時期だというのに街を歩く人の姿はポツポツと少し寂しい雰囲気が漂っていた。



今回暮れに福岡の旅を選んだ理由の1つに筑豊鉄道関連に乗りたいという目標を密かに掲げていた。

九州のいくつかあるローカル線の中でも福岡はとても地味な部類だ。
市街地天神とは遠く離れた大分の上スレスレを走る鉄道など一般の観光客なら必ずスルーをすると言ったところだろう。



事前に少し調べたものの、あまりにも情報が少な過ぎるので簡単な回る順序と時刻表だけを調べて鉄道へ乗り込んだ。



20200114123310b57.jpeg




車両は平成という名前だけあって2007年から導入された新しい鉄道が走る。

せっかくのディーゼルなのに、ふかふかのロングシートで窓が綺麗とは、、、鉄ヲタとしては何とも微妙な心境になるが地元の利用者は快適そうに座っている。


202001141233122ce.jpeg


吊革を見上げると平成筑豊のマスコットキャラ〝ちくまるくん〟が装飾されており、神社の酒樽並みにズラーっとスポンサーの名前が書かれていた。

地域が一丸となって鉄道を支えているのはローカル線によくある事だがこの光景だけでも胸がジーンとなる。




平成筑豊鉄道は田川線・伊田線の2つで編成される鉄道だがユニークな駅名が多い路線であるのも特徴である。


令和元年に新しく命名された令和コスタ行橋駅。
夏目漱石の小説「三四郎」の舞台になった東犀川三四郎駅。
夏の終わりには蛍が美しい源じぃの森駅。


2020011412331308f.jpeg


20200114123314261.jpeg




どれも個性豊かな駅名で車内のアナウンスが流れる度にニヤニヤしてしまう。

車窓は何の変哲もない長閑な市街地と田園地帯が広がるのみであるが、ちょうど差し込んでくる日差しが気持ちよくウトウトと眠気を誘ってくる。






途中、後藤寺線というJR九州が所有する路線とも繋がっていたので途中下車をして、そちらにも乗ってみることした。

後藤寺線は元々は筑豊本線の貨物支線であり、鉱山が近くにあったことから石火石を運ぶための鉄道として利用されていたのだそうだ。

20200114123229936.jpeg


鉱山という浪漫を溢れるキーワードに自然と体が前のめりになるが、現在は電気の時代。

終点の後藤寺駅は昭和の賑わった面影を感じられはするが 現在では死のアーケドになっており賑わいを見せた過去は空のテナントという形でその痕跡のみを残している。

 202001141232286bb.jpeg


年末だからか更にゴーストタウン化したアーケードとは裏腹に
軽やかなメロディが永遠とループで所々のスピーカーから流れてくるので何ともシュールだ。


それでも、たまにすれ違う子ども達は元気に自転車を乗り回していたり、誰もいないアーケードで隠れんぼをして遊んでいたりと非常に健やかであった。



202001141232265f6.jpeg

2020011412323722c.jpeg




時代に忘れさわれた街ではあるものの、その領域すべてが遊び場になっており、子どもたちが自由気ままにはしゃいでいる姿を見て
いい街だなァ と感心しながら再び鉄道に乗り込んだ。








昼前に小倉からスタートを切った鉄旅も筑豊電気鉄道に乗り込む頃には、すでに16時となっていた。
東京なら既に暗くなっている時間ではあるが、九州日の出が長いので残り1時間半くらいは猶予がある。


そうは言うものの、足早に平成筑豊鉄道の終点 直方駅から筑豊電気鉄道の始発 筑豊直方へ向かうこと15分。

国道沿いを歩いていると突然セメントの固まりにモノレールのような車両に乗っかっているような施設が現れた。
しばらく考え込んだ後、念のためにクルッと正面に回って看板を確認してみる。


20200114123239d83.jpeg



〝筑豊直方駅〟。

こ、これが駅なのか、、、!


20200114123238437.jpeg


どう見ても駅に見えないその施設は紛れもなく筑豊電鉄の駅であり、未だに半信半疑のまま階段を上がると先ほどのモノレールのような車両が停まっていた。





20200114123238a53.jpeg



1988年に導入されたこの5000系は、車内照明のLED化や制御装置や電力回生ブレーキの搭載しているという 何とも駅に見合わないハイテクな車両だ。


休み期間中の部活帰りだろうか。
ホームに数人並んでいる学生と共に乗車した車両はノンステップも搭載されておりバスのような内装となっていた。

1人席はいくつかエンジンがあるためかその部分のみ盛り上がっており、ゆりかもめの倍あるだろう縦横広い窓で車窓を独り占めできるのもなかなか嬉しい点だ。


2020011412323879f.jpeg




走り出した5000系は、意外にも軽快であり尚且つ揺れまくる。。。
路面の枕を整備し忘れているんじゃないかと思うくらいガタガタ揺れるのでお年寄り等はとても立っていられないだろうスピードで住宅街スレスレを駆け抜ける。
何という恐怖アトラクション。


車両は細い小道を走るように民家のすぐ横を通るので悪意があって視線を向ければ その家の窓の中も覗けるような近さであった。
色々な意味ドキドキが止まらない鉄道である。






20200114123238e4b.jpeg


終点の黒崎駅前に到着する頃にはすっかり日が沈みかけていた。
これから再び小倉に戻って宿に向かわなければならない。

九州とはいえ、冷え切った体を小さく縮こませ〝夜はうどんでも食べよう〟とぼんやり呟きながら帰りの車内で眠りについた。






  1. 鉄道紀行文
  2. cm: 3
  3. [ edit ]

【新潟旅行記】秘境駅路線 只見線の旅なのだよ。

20190909081436bfa.jpeg


鉄道に興味を持ち始めて2、3年が経過した頃
当時私は短大1年生であった。
本屋の鉄道雑誌コーナーで何気なく立ち読みをしていると
その時シーズンであった18きっぷ特集を多くの雑誌が組んでおり、全ての表紙が只見線を取り上げていたのだ。


そんなに人気の路線なのか と関心を持ってはいたが、小出から会津若松まで総距離は135.2km。
時間にすると約5時間ほどを有することになる。

故に女学生である身分の自分には奇しくも門限というものがあり 、断念する他なかったと思える。


それ以来というもの、
“鉄道好きは只見線に乗っているもの”と
安易な方程式が私の中で出来上がり いつか絶対に足を運びたいと胸に秘めていた。

なぜ雑誌が大々的に只見線を取り上げていた本来の理由も知らずに。。。





20190909081441bcb.jpeg



それから6年の年月が経ち、私は始発駅小出駅のホームで列車を待っていた。
只見線は絶景車窓の列車、秘境駅のオンパレードと人気を博しているが
小出から出発する列車は1日3往復ほど。

しかも1度逃すと3時間はざらに来ない事から慎重な区間ごとの接続計画が必要となってくる。
こんな鉄道が本当に鉄ヲタ以外にも人気があるのだろうか。

疑問を持ちながらも乗り込んだ車内は、それなりに席が埋まっているというのだから驚きだ。
世の鉄ヲタが増えたのか。ただ単に一般の変わり者の独り身が増えたのか。
他人に皮肉をぶつけて考えていたが、どちらも当てはまるのは自分の方か と気付いてからは黙って越後湯沢で買った酒を飲みながら窓の外を眺めた。


列車が走り出すと、当時雑誌で見たような広大な田子倉湖が広がっていた。
前日の雨で皮は茶色く濁っていたが、橋かけられた線路一本で古びたディーゼル車がぐんぐん進んでいく様子は下手なアトラクションよりも迫力がある。

誰も降りずにただ通過するだけの駅もどれも駅舎とは言いがたく、プレハブ小屋と称する方が適切だろう。





20190909081439d3f.jpeg



只見駅に着いたら、すぐに会津若松行きの列車へ乗り換えるつもりだった。
鉄旅をする中でその町の雰囲気を知る為、最も途中下車にこだわった旅を続けている私でも秘境駅が連なるこの路線で今回の区間の接続では苦しいものがあったからだ。

私は駅舎で次の列車をひたすらに待ち続けていた。
しかし、ほとんどの乗車客は、駅前に止まったバスへ乗り込んでいるではないか。

何やら不穏な予感を感じながら駅舎に貼られた時刻表全てに目を通すが、只見駅からはバスの時刻表しか無い。

もしかして、只見駅から先はバスしか無いのだろうか、、と感づいた時には既にバスの姿はなく後の祭りであった。


はたしてどうしたものか。
予想外の出来事に呆気を取られながらも、取り急ぎ頭を冷やしに手洗い所へ入ると妙な資料を見つけた。


「平成23年新潟福島豪雨災害について」。

その記事を見た際に、何故バスしか無かったのか。学生の頃雑誌が騒ぎ立ていた理由等全てが鮮明に繋がった。


只見線は、23年7月に起きた豪雨災害で橋等が流されてしまい
27.6㎞(会津川口~只見)の運休区間は復旧工事中なのだという。

雑誌で多く取り上げたのは、代行バスを走らせてまでも資金を得るための復興支援の一環であったという訳だ。



こんな事も知らなかったとは、、、時刻表だけに気が取られて下調べをまったくしなかった自分に悲壮感を覚えた。





とにかく、現在時刻は14:30。次のバスは16:00まで来ない。

資料の隣には只見駅周辺のマップが描かれたチラシが重ねられており、そっと1枚取って睨めっこをしてみる。


周辺には、神社、SLの展示車両、銭湯、、、1時間半くらいなら十分に時間を潰せそうだ。
幸いにも駅にはレンタサイクルが実地されており、さっそく窓口に向かい500円で電動自転車を借りる事に成功した。



201909090814422ca.jpeg



荷物を窓口に預けて、軽くなった身体を
ぐんぐんと自転車で走らせ、手始めに神社でこの先の旅の無事をお祈りした後 SL広場へ向かう。





201909090814291b6.jpeg



展示されていたのはC11系。
1934年の製造されたものであり、元々55年から70年までは、主に只見線の小出駅〜大白川駅間を走っていたとされる。
現役引退後の72年から、この広場に展示されたという。

年月が経っている割に車体が綺麗かと思えば、後から調べてみれば今年の4月に復旧イベントとして地元の住民たちで塗り直しを行ったとの事。




201909090814303d7.jpeg



SLの向かいの畑には、これもまた地元の子供達が立てたと思われる“かかしの人形”がいくつか並んでいた。

静かな場所だが、こうした住民たちの一致団結した思いがどこか暖かく漂っており心が自然と洗われるようである。







さらにチャリンコを走らせ川沿いまで来ると、いよいよお待ちかねの銭湯を発見する。
季節は8月末。東北とは言え、じんわりと汗をかいていた体にはありがたい。



外観とは裏腹に内装はリフォームでもしたのか綺麗に整備されているが、職員は受付のオジサンがポツンと1人。
客も私1人のみのようで、風呂場も実際の面積よりも広々と感じる。

湯は42℃くらいだろうか。
ゆっくりと身体を沈めるながら、じんじんと包んでいく風呂の気持ちよさに思わず歓喜した。





やはりこうして途中下車をしたのも何かの縁なのか。
ついつい私も接続の件ばかりが頭をよぎり終点まで完走することを目標にしていたが
鉄道に乗るだけで無く、実際の現地に出向き資金を落とすことが何よりの地域全体の支援になるのでは無いかと改めて思う。

少しばかり開いた窓から聞こえる蝉の鳴き声を聴きながら、自分にとっての旅の本筋を忘れていた自分に少しばかり反省するのであった。








その後、バスで会津川口駅まで行けたはいいものもコンビニもない街で2時間の待ちぼうけを喰らい、
会津中川駅まで徒歩で30分かけて歩くという ちょっとばかりのハイキングをしているうちに宿泊する喜多方に到着したのは辺りも真っ暗の21:30であった。



幸いにもこの日お目当てであった喜多方ラーメンは無事に開いている店を1軒見つけることができ、やっと辿り着いた夜の飯テロ攻撃を全身全霊で受けたのであった。


意外にもお喋りなオヤッサンが作る600円のラーメン。味は若干クリーミーではあったが 喜多方ラーメンらしく昔ながらの優しいスープと平たい縮れ麺が腹の底まで染み渡る。

出来れば今日の旅もこの味を忘れないでおきたいと決心に近い気持ちで祈りながら、私はスープを全て飲み干すのであった。






  1. 鉄道紀行文
  2. cm: 5
  3. [ edit ]

【新潟旅行記】上越線でぽんしゅ館を目指してなのだよ。


201908280826136ea.jpeg




来たる8月下旬。
世間の子供たちの夏休みにそろそろピリオドが打たれる頃、私は早朝の鉄道に揺られ越後湯沢を目指していた。

大人になってからというものお盆もまともに取ることが出来ないこの世の中で、有休を使用し短いながらも儚い大人の夏休みというものを無事獲得することが出来たからだ。

夏休みといっても、安静を取って身体の休息を日も入れての日数であるから
実質旅の期間はわずか3日間。
近頃塾の夏期合宿でもこんなに短いことすら無いというのに大人とは なんて不憫な生き物なのだろうか。



平日という事で、そんな不憫な大人達が群がる通勤ラッシュを横目で見ながら高崎から人混みを潜り抜け
やっとのことで上越線に乗車した。

上越線といえば群馬から新潟の長岡をまでを結ぶそこそこ長い列車として知られているが、ただ距離があるだけでなく実に多様な景色を楽しませてくれる列車でもある。



手始めに高崎から水上まではまったりとした田園地帯が広がり、木々のトンネルを抜け長閑な山風景が広がっている。
まだ関東圏内というのに、少しばかり遠くに来たようで旅の香りが漂い始めるのだ。

そして水上からは極端に越後湯沢方面へ向かう本数が減るので、鉄道の接続の難易度も上がってくる。
何よりもこの水上から先の土合駅は下りホームが新清水トンネル内に作られおり、下り線のホームが地下70mの所にある。

つまりあの果てしないエスカレーターで乗り降りする都営大江戸線(最深は六本木駅)よりも42mさらに深く日本一のモグラ駅と呼ばれているらしいのだ。

その深さから階段を10分ほど降りないと辿り着くことが出来ない核シェルターのような作りとなっているというのだから まさに浪漫が詰まった駅とも言えるのではないだろうか。





土合の先は群馬と新潟の県境という事で特に長いトンネルがしばらく続いた後のトンネルを抜けると、、外気との温度差で窓の外が曇り何も見えなかった。。。
まるで松尾芭蕉もビックリなある意味での銀世界である。

2019082808261897e.jpeg



期待を持たせといて肝心なところを隠してしまうという何ともツンデレな雰囲気を持つこの列車。
こんな面白い風景を早いからという理由で新幹線ですっ飛ばしていくなんて 勿体鉄ヲタの風上にもおけない←

越後湯沢に近づくにつれ、スキー場のメルヘンなロッジ窓景にチラついて ついに辿り着くは越後湯沢。


私が今回この越後湯沢に旅の通過点に選択した理由は他やらぬ“ぽんしゅ館”の存在である。

ぽんしゅ館とは、越後魚沼のお酒や食が集まる越後のお酒ミュージアムの事であり
今回の目的地でもある「ぽんしゅ館 利き酒番所」は、館内に併設された新潟越後の酒を92蔵も利き酒できるという まさに大人のテーマパークなのだ。



私は以前学生の頃にも実はこの場所に訪れた事があり、
その際に試飲した“越後武士”というお酒に
まさに侍の如く切り捨てられ帰りの列車で泥酔してトイレで眠りこけるという超絶迷惑極まりない失態を犯している。。。

“それ、いつの学生の頃か”と聞かれれば 口をモゴモゴさせることしか出来ないのだが、、、今回はそうした若気の至りをしてしまった自分自身へのリベンジも兼ねているという事だ。



20190828082616697.jpeg


入り口に設置された酔っ払いの像。
まさに酔っ払いの末の果てが造形されており、こうはなっては駄目なのだと
謎の気が引き締まるようである。

ぽんしゅ館のシステムとしては、
カウンターに500円を支払いコインを5つ受け取る事から始まる。

あとは、ガシャポン型のサーバーへコインを投入して日本酒を入れるのみ。
何が出てくるか分かっているはずなのに、この仕組みが毎回大人の心の奥をワクワクさせるのだ。

プレミアム酒も設置されており、その段階によって投入するコインの数も変動するシステムも中々理に適ったものとも言えよう。


今回、私が飲んだ日本酒は7蔵。
その中でも特に美味しく記憶に残っていたものが白龍酒造の“宣機の一本”というもの。



20190828082611bd0.jpeg



精米歩合を35%まで磨き上げたという酒は、これでもかという程に美しく透き通った透明色に思わず飲む前からゴクリと喉を鳴らしてしまう。

口をつけた瞬間にフワッと華やかや香りが広がる高級感溢れる味わいはまさに心が酒で洗われるよう。

通常通販では5.400円で販売されており、これでならコイン3枚という理由も納得。






もう1本は、青木酒造の“雪男”。


20190828082612f8d.jpeg



淡麗辛口の新潟の酒といえば“たかの井”、“麒麟山”、そしてこの雪男であると勝手に自負しているだが
手頃な値段の上に爽やかなキリッとした味わいの後のまろやかな米の旨味が舌に残りなんとも堪らない多福感を与えてくれるのが この酒。


ラベルの絵柄からも人気の酒でもあるが
元ネタとしては、江戸後期に書かれた雪国越後・魚沼の暮らしを綴った鈴木牧之の「北越雪譜」からだと言う。
このなかの「異獣」という章に、山中に現れ、旅人のにぎり飯をもらい
お礼に荷物を担ぎ、道案内をする毛むくじゃらの異獣が登場する。

これが後に日本酒のキャラクターになるなんて、さすがの異獣も考えてもいなかっただろうが グッズ展開もされており結果ウケているというから驚きだ。


その他にも、

高橋酒造 雪兜(純米吟醸)
高千代酒造 高千代(純米吟醸)
久住美酒造 清泉(純米吟醸)
越銘醸酒造 越の鶴(大吟醸)
頚城酒造 和希水(純米酒)


このように改めて記録するとほとんど純米吟醸を自然に選んでいた事が分かる。

時刻は真昼間。
平日の日中にこれだけ手軽に色々飲めて酔っ払えるとは、つくづく新潟県民を羨ましく思った。

私は小瓶の雪男を購入して再びホームで酒盛りをする。
酒の香りが漂うが近くの人々は よく見かけると言った表情で罪悪感は皆無だ。


ああ、老後は新潟県に住もう。

そう胸に淡い夢を抱きながら、また一口グビりと喉に酒を通した。


後日、新潟駅のぽんしゅ館でさらに酔っ払うという事は
この時の私はまだ知らない。






  1. 鉄道紀行文
  2. cm: 5
  3. [ edit ]

憂うつ麗 春のいすみ鉄道紀行文なのだよ。

P1060098.jpg



令和が発表されてから一週間も経っていない暖かな春の日の事。

私はただただ頭の思考を停止させ、まるで空っぽの人形のように内房線に揺られていた。
行き先はいすみ鉄道の始発駅大原に向かうとだけ決め、他の情報は一切調べずに無計画に家を出た。


休日になるとただただ無気力という名の波がが私を包み、全ての行動力を奪おうとする前に抵抗をしたかっただけなのかもしれない。


この日の気温は平均18℃。
春の暖かな日差しが次の一歩を一層緩やかにしていく。
電車を降り、いすみ鉄道線の駅へ向かうと昼前というのに第3セクターの小さなホームは人でごった返しているという悪夢の光景が広がっていた。



P1060026.jpg


いすみ鉄道はこの時期になると全線26.8キロのうち約15キロ菜の花と桜が咲き乱れる。
加えてローカル鉄道御用達の改良型キハ系の小さめな黄色いボディに
路線全体のテーマにムーミンを掲げたりという女性受けの要素を含んだ鉄道であることからまさに今の時期は打って付けの観光客期間と言える。



そんな事前情報は分かっていながらも、普段なら人の多さに嫌気が指し『見頃』を避け続けたこれまでの自分の選択を勿体ないと悔いるような気持ちもどこか心の片隅にあったからであろう。
引き返したい気持ちをグッと抑え、旅で癒されに来たのにも関わらず結局私はいつもの日常と変わらない群衆の群れの中にいる。

人の好奇心というものはつくづく厄介でどうしょうもないものだと思う。




P1060014.jpg



手すり等の仕切りも一切ないロングシートはびっちりと隙間もない程に人で埋められ、車両は発車した。
車内は家族連れ、老夫婦、カメコ。中でも女子旅風の女性達で数を占めており、非常に華やかであった。

客層に観光色か強くある事から最初の桜スポットを訪れた時にはワッ!と黄色い歓声が上がる。これではまるでアトラクションの様だ。




途中駅間での間にやけに長い桜が連なった土手があるのだが、私が好きな鉄道写真家の中井精也さんによると

当時、その場所で名所を作ろうと地元のとある男性が桜の苗を植え育てたものがその長い桜ロードを生み出した

という話を耳にした事がある。




幾度も車景に現れる桜を見ては周囲の感動とは 裏腹にどこだろう?とキョロキョロとしていると
しばらくしてそこが東総元駅手前のカーブだと知った。

窓を覗き込んでみると、なるほどトンネルの様に連なった桜の麓に菜の花も一緒に咲き乱れ見事な淡いグラデーションを描いている。

視界だけではなく、心にまで彩りを与えられてもらえそうな その景色に
車掌もここぞというばかりに短く説明のアナウンスを入れると車内の人々は一斉に立ち上がって覗き込めばカメラを構える。


それまでウットリと桜に奪われていた視線の先が人であっという間に覆われてしまい、
私は何だかそんな光景に疲れてしまう。

スッと腰を下ろし、大多喜駅で食事を摂るために下車した。





P1060045.jpg



いすみ鉄道で食事を摂るなら始発駅の大原かこの大多喜くらいしか栄えた場所がない。
となると当然ながら人も多く降りる訳で
あっという間に周辺の飲食店は行列でいっぱいになっていた。

だんだんと心に募っていく不満を少しでも解消するために、駅から数メートル離れた寿司屋で食事をした後人気ない道を散歩してみる。
とにかく少しでも人がいないところ逃げ込みたかった。いい思いをするためには、こんなにも人混みに紛れなければならないのか!





P1060047.jpg



自然と足早になるそんな時に『酒癖小路』という気になる道が目に入る。

小さく看板に書かれたその道はなんの特徴もない路地裏の一本道であった。
中々面白そうだと好奇心が私の体を動かす。

人気もなく突然現れる普通の民家や地元の駐車場など、蔵造りの表通りとは違ってそこには普通の町と変わらない世界が広がっている。




P1060066.jpg



道の途中大きな桜も菜の花が現れ、ただただ風にサラサラと揺れる音だけが聞こえる。
春風が吹くたびに肌を優しく撫でるよう伝うのも気持ちがいい。
何もかもが穏やかなこの空間で、今初めて私は今年の桜を正確に見たのだと思った。



P1060065.jpg



しばらくそれを眺めていると、どことなくニャーと鳴き声がして一匹の猫が私の足元へとやって来た。
人に慣れているようで頭を擦り付けてくる姿が可愛らしくおもわず「こんにちは」と挨拶をする。

猫の方も挨拶がてらのマーキングを終えると、こちらを警戒する素振りも見せず駐車場で毛づくろいを始めた


目に入る全てものが優しく、春の微睡みの中に溶けてしまいそうだった。

やはり人のいない場所にこそ、その街の本当の良さがあるものなのだ。
根拠のない格言を生み出すと、徐に自らに言い聞かせながら再び歩き出した。






その後、小道を出たところに小さな酒造を見つけたので小瓶を一本買った後、大多喜城の散策した。
どこも鉄道の中程の人はそんなにおらず静かに散策を出来たのが何よりもよかった。




P1060063.jpg




P1060061.jpg





P1060085.jpg







終点の上総中野に着くもホームは相変わらず人でごった返していたので、折り返し列車で国吉まで向かう。



P1060095.jpg



国吉駅は、路線の中でムーミンの象徴するものが沢山あり駅舎にはムーミンショップ。
ホームの裏には「風そよぐ広場」と題してピクニック広場もある。

一見こちらも観光色が強そうな場所であるも、時刻は既に西日が照らし出す夕方。
駅は本来の静寂さを取り戻しつつあった。





P1060107.jpg


ホームには手作りで作られたような木のベンチが設置されており、私はそこに腰をかけると昼間に買った酒造の小瓶を開けた。
列車が来るまでの時間、ホームで花見酒なんて都会では白い目で見られざる得ない光景だが ここにはそんなケチ臭い連中はおるまい。



ゆったりとした風になびかれ桜の花弁が風に散り小さく花吹雪を起こす。

“お猪口でも買って花弁を浮かせて飲むのも風情だったなァ”

そんなどうでもいい事を思いながら、また一口瓶をラッパ飲みする。



あの著名作家である梶井基次郎の作品に『桜の樹の下には』という作品がある。
話を要約すると、桜があんなに美しく人を魅了するのは、桜の樹の下には屍体が埋まっており、それを養分としているから、、、だそうな。

主人公は、それまで未知なる桜の美しさに恐怖していたがやっと答えを見つけ出しては安心して花見酒が飲めるようになったという話である。



何とも彼らしい妄想力溢れた作品であるが、私はこの作品を初めて読んだ時に妙に納得してしまい、それ以来毎年桜の樹の下で花見酒をしている。


まぁ、屍体が埋まっていると思いながら桜を見る者もそうそういないと思うが、
人間を養分としているから美しいと思わせてくれるその浪漫が酒を一層美味しくさせるのでは、、、と私はそう解釈をしている。。。





P1060094.jpg






しかし目の前に咲いている桜の樹の下には屍体ではなく、木彫りの手作り感溢れるムーミンの像が建っている。

ムーミンを養分としてる桜か。。。。
いやいや、、、と自らの考えようとしている思考一旦ストップさせ
私は静かに小瓶を飲み干した。





NEW ENTRY  | BLOG TOP |  OLD ENTRY>>

プロフィール

森田 涼花(もりた すずか)

Author:森田 涼花(もりた すずか)
26歳
H5 6/2 ふたご座 A型


吉原の多恋人俱楽部という店に在籍している森田涼花といいます。

大人の職業をさせていただいてますが、当ブログでは個人的な日常と趣味についてツラツラと綴っていくブログです。

若干長文気味ですがお付き合い下されば幸いです。

◾️多恋人倶楽部HP:
http://www.talent-club.com/

森田涼花が在籍しているお店のホームページです。

◾️instagram:
suzuka_noinsuta

ブログ以外の簡易的に日常の報告用に更新しています。

カレンダー

03 | 2024/04 | 05
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -

店舗情報

店舗名
   吉原ソープランド 多恋人倶楽部

お問い合わせ番号
   03-3876-7077

アクセス
   東京都台東区千束4-31-2

営業時間
   8:30~24:00