【新潟旅行記】上越線でぽんしゅ館を目指してなのだよ。
来たる8月下旬。
世間の子供たちの夏休みにそろそろピリオドが打たれる頃、私は早朝の鉄道に揺られ越後湯沢を目指していた。
大人になってからというものお盆もまともに取ることが出来ないこの世の中で、有休を使用し短いながらも儚い大人の夏休みというものを無事獲得することが出来たからだ。
夏休みといっても、安静を取って身体の休息を日も入れての日数であるから
実質旅の期間はわずか3日間。
近頃塾の夏期合宿でもこんなに短いことすら無いというのに大人とは なんて不憫な生き物なのだろうか。
平日という事で、そんな不憫な大人達が群がる通勤ラッシュを横目で見ながら高崎から人混みを潜り抜け
やっとのことで上越線に乗車した。
上越線といえば群馬から新潟の長岡をまでを結ぶそこそこ長い列車として知られているが、ただ距離があるだけでなく実に多様な景色を楽しませてくれる列車でもある。
手始めに高崎から水上まではまったりとした田園地帯が広がり、木々のトンネルを抜け長閑な山風景が広がっている。
まだ関東圏内というのに、少しばかり遠くに来たようで旅の香りが漂い始めるのだ。
そして水上からは極端に越後湯沢方面へ向かう本数が減るので、鉄道の接続の難易度も上がってくる。
何よりもこの水上から先の土合駅は下りホームが新清水トンネル内に作られおり、下り線のホームが地下70mの所にある。
つまりあの果てしないエスカレーターで乗り降りする都営大江戸線(最深は六本木駅)よりも42mさらに深く日本一のモグラ駅と呼ばれているらしいのだ。
その深さから階段を10分ほど降りないと辿り着くことが出来ない核シェルターのような作りとなっているというのだから まさに浪漫が詰まった駅とも言えるのではないだろうか。
土合の先は群馬と新潟の県境という事で特に長いトンネルがしばらく続いた後のトンネルを抜けると、、外気との温度差で窓の外が曇り何も見えなかった。。。
まるで松尾芭蕉もビックリなある意味での銀世界である。
期待を持たせといて肝心なところを隠してしまうという何ともツンデレな雰囲気を持つこの列車。
こんな面白い風景を早いからという理由で新幹線ですっ飛ばしていくなんて 勿体鉄ヲタの風上にもおけない←
越後湯沢に近づくにつれ、スキー場のメルヘンなロッジ窓景にチラついて ついに辿り着くは越後湯沢。
私が今回この越後湯沢に旅の通過点に選択した理由は他やらぬ“ぽんしゅ館”の存在である。
ぽんしゅ館とは、越後魚沼のお酒や食が集まる越後のお酒ミュージアムの事であり
今回の目的地でもある「ぽんしゅ館 利き酒番所」は、館内に併設された新潟越後の酒を92蔵も利き酒できるという まさに大人のテーマパークなのだ。
私は以前学生の頃にも実はこの場所に訪れた事があり、
その際に試飲した“越後武士”というお酒に
まさに侍の如く切り捨てられ帰りの列車で泥酔してトイレで眠りこけるという超絶迷惑極まりない失態を犯している。。。
“それ、いつの学生の頃か”と聞かれれば 口をモゴモゴさせることしか出来ないのだが、、、今回はそうした若気の至りをしてしまった自分自身へのリベンジも兼ねているという事だ。
入り口に設置された酔っ払いの像。
まさに酔っ払いの末の果てが造形されており、こうはなっては駄目なのだと
謎の気が引き締まるようである。
ぽんしゅ館のシステムとしては、
カウンターに500円を支払いコインを5つ受け取る事から始まる。
あとは、ガシャポン型のサーバーへコインを投入して日本酒を入れるのみ。
何が出てくるか分かっているはずなのに、この仕組みが毎回大人の心の奥をワクワクさせるのだ。
プレミアム酒も設置されており、その段階によって投入するコインの数も変動するシステムも中々理に適ったものとも言えよう。
今回、私が飲んだ日本酒は7蔵。
その中でも特に美味しく記憶に残っていたものが白龍酒造の“宣機の一本”というもの。
精米歩合を35%まで磨き上げたという酒は、これでもかという程に美しく透き通った透明色に思わず飲む前からゴクリと喉を鳴らしてしまう。
口をつけた瞬間にフワッと華やかや香りが広がる高級感溢れる味わいはまさに心が酒で洗われるよう。
通常通販では5.400円で販売されており、これでならコイン3枚という理由も納得。
もう1本は、青木酒造の“雪男”。
淡麗辛口の新潟の酒といえば“たかの井”、“麒麟山”、そしてこの雪男であると勝手に自負しているだが
手頃な値段の上に爽やかなキリッとした味わいの後のまろやかな米の旨味が舌に残りなんとも堪らない多福感を与えてくれるのが この酒。
ラベルの絵柄からも人気の酒でもあるが
元ネタとしては、江戸後期に書かれた雪国越後・魚沼の暮らしを綴った鈴木牧之の「北越雪譜」からだと言う。
このなかの「異獣」という章に、山中に現れ、旅人のにぎり飯をもらい
お礼に荷物を担ぎ、道案内をする毛むくじゃらの異獣が登場する。
これが後に日本酒のキャラクターになるなんて、さすがの異獣も考えてもいなかっただろうが グッズ展開もされており結果ウケているというから驚きだ。
その他にも、
高橋酒造 雪兜(純米吟醸)
高千代酒造 高千代(純米吟醸)
久住美酒造 清泉(純米吟醸)
越銘醸酒造 越の鶴(大吟醸)
頚城酒造 和希水(純米酒)
このように改めて記録するとほとんど純米吟醸を自然に選んでいた事が分かる。
時刻は真昼間。
平日の日中にこれだけ手軽に色々飲めて酔っ払えるとは、つくづく新潟県民を羨ましく思った。
私は小瓶の雪男を購入して再びホームで酒盛りをする。
酒の香りが漂うが近くの人々は よく見かけると言った表情で罪悪感は皆無だ。
ああ、老後は新潟県に住もう。
そう胸に淡い夢を抱きながら、また一口グビりと喉に酒を通した。
後日、新潟駅のぽんしゅ館でさらに酔っ払うという事は
この時の私はまだ知らない。
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- 2019.08.28 (水) 22:31
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このコメントは管理人のみ閲覧できます- 2019.08.29 (木) 00:38
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Author:森田 涼花(もりた すずか)
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