減りゆく蒸気機関車との出会い 真岡鉄道紀行文なのだよ。
また、名残深い路線からSLが1台姿を消す。
一時期、廃止をしていた時代よりかはいくつか復活を果たしたが
蒸気機関車は、設備や技術がかかる上に、1台あたりに数千万〜1億円以上と膨大な維持費が負担になって来る。
この金額の多くは、車両の車検にあたる法定検査が圧倒的に締めており、
多くの鉄道会社はこの金額を支払いきれず静態保存になってしまったり、別の路線へ譲渡する場合が多い。
臨時列車を含めると1現役で日本を走るSLは10路線以上存在すると言われているが、
その中でも関東からさほど遠くない距離にある茨城県 真岡鉄道のC11系が乗車利用率の低下、
更には上記で述べたよう金額的負担が大きい法定検査の時期に差し掛かったということでついに車両を譲渡するようだ。
真岡鉄道はC11系の他にC12系という車両も保持しているため、完全なSL運行が取りやめになる事はないが
長い歴史を走り抜け、詳細な作りの車両でもあるから突然運休になることも考えられる。
先月、私は何気なくこの廃止のニュースを目にして、
どこか遠くへ引き渡される前に是非乗車したいと思った。
思いつきとは言え、旅の行き先を茨城に指定したのも実はこの理由。
前日に水戸で1泊をし、下館駅には発車1時間前に到着するという準備万端の体制で挑むのであった。
意気揚々と発車ホームへ向かうと、予想以上に乗車客でごった返した光景が現れる。
まさか1両減るだけでもこんなにも影響があるとは、、、と咄嗟に鉄ヲタの思考を巡らせていたが
どうやらこの日は年に2回行われる益子の陶器市に訪れる人でほとんどのようだった。
流石にいくらSLが物珍しいからと言って、減車発表後すぐに飛んで来る鉄道ファンは残念ながら少なかったようだ。
数時間、秋晴れと言いつつも少し肌寒い風に吹かれ、待つこと数十分。
ついにC11系がホームに到着する。
元々小柄なC50系を元にデザインされた車両であることながら当然本車体も小さく、
尚且つ改良に改良を重ねられたものだから後に車両が軽すぎるという問題点を抱えることになる。
D51系ほど大柄で男臭くもなく、かと言ってC57系のように貴婦人等と女性に例えるまでもない中性的な佇まいをしている。
一部でC11系は”シーチョンチョン”とか間違った中国語みたいなヘンテコな呼ばれ方をされているが
小柄なのに妙に色男感が出ていることから擬人化したら絶対に美少年だろうなと予想する。
群がる人集りに思わず車掌さんもおそらく宣伝用かと思われる画像をパシャり。
時代ですなァ。
1時間前に並んでいたものだから当然乗車列も先頭。
さて、いざ乗車!と乗り入れるもなぜか車内はハロウィン仕様(撮影日は11月3日)。
期間限定内装という意味ではサービス的な延長と考えた方が正しいのかもしれないが
こういう少し抜けた感じもローカルぽくて思わず気持ちが緩んでしまう。
相席でも構わないから景色をじっくり見たいと思い、クロスシートへ遠慮なく座ると
すぐさま向かいには丸メガネを掛けた品のいい年配の女性が座った。
健康的な体系に革小物をさりげなく身につけたその女性は、どこか年代ものの鉄道と合わせていい雰囲気を醸し出しており
私は密かにジョンレノンのおばさんと勝手に命名をした。
お互いに緩やかに車両に揺られ、温かな日差しに包まれのんびりと窓を眺めているだけで特に会話はない。
始めは住宅街を走っていた列車も真岡に近づくにつれ、よくあるような田園風景が広がり、ただその景色に癒される。
ジョンレノンの叔母さんも少し微笑んだような優しい口元をしており、時には目を閉じてリラックスしているかのようだった。
私もつられてふわふわとした気分になる。
初めて口を開いたのは、真岡駅に到着する直前の事。
切符確認の際、乗車客全員に”乗車記念切符”と題しての硬券がプレゼントされた。
片道切符がペラの細長い紙だったことから若干テンションを落としていた自分にとっては
何たるサプライズだろう!と思わずニヤッとだらしない顔をしてしまったのだ。
「なんかこういうのって良いですよね。」
私の表情に気づいたジョンレノンの叔母さんが淑女な一言を掛けてくれた。
ふと我に返った自分は、顔を隠すように俯きながら
「そうですね。」と照れ笑いをすることしかできなかった。
真岡鉄道の表題にもなっている真岡駅には、
SLキューロク館という施設が隣接されており、古いSLや客車が展示を無料で見る事ができる。
プラン的に途中下車する時間に余裕がない私は停車している15分間の間に出来るだけ見て回ろうと
猛ダッシュに近い早歩きで(ホームは走っちゃダメ)列車を飛び出した。
駅舎を見上げると見事なSL推しを象徴するかのようなガラス張りのSL型の建物。
待合室にはレールの模様が描かれていたり、駅入口はタイヤをモチーフにしている等細かな細工が沢山ある。
館内には、先ほど臭いとおちょくったD51系はディーゼルーのキハ20系という年代物の車両が静かに展示されていた。
残り5分を切ったところで急いで列車に戻る。
心の中ではとはいい、こんなに子どものように無邪気にはしゃいで早歩きしまくったのはいつぶりだろうか。
どこかスッキリとして気分で満足気になり、元いた席に額に汗を滲み出しながら真っ赤な顔で戻ると
「おかえりなさい。」とジョンレノンの叔母さんが微笑んでいた。
「見れましたか?」
「ええ、、、ぐるっと見て来ました。」
息を整えながら応えた。
また車両がゆっくりと走り出したが、それ以上の会話は特にしない。
お互い必要以上に話さないところが妙に心地が良く、まるで小説のような出会いに
“勢いとはいえ旅に来て良かった”と心底思った。
その後も鉄道はぐんぐんと距離を進んでいき、程なくして益子駅のホームに止まると
乗客のほとんどが一斉に降りていった。
人の流れが落ち着いてくると、ジョンレノンの叔母さんもまた然り。
同じように立ち上がっては
「なんだか、ありがとうございました。」
思いもよらず丁寧にお辞儀をされたので
「こちらこそありがとうございました。」と頭を下げた。
相変わらず優しく微笑みながら立ち去っていったジョンレノンの叔母さんの後ろ姿を
どことなく寂しさを覚えながらも見送り私は終点の茂木駅を目指す。
茂木駅では、折り返し列車で戻るためあまり時間がない。
転車台での車庫入れの瞬間が見学できるということで、私はゆったりと眺められる駅二階のスペース上がってその様子をじっくりと観察することにした。
今か今かと転車台前の人集りの中には初めて観たのだろうか。
父親に連れられて最前列で見る子どもが目を輝かせながら その様子に釘付けになっている。
さらにその後ろで立派なカメラを構えた父親がSLと子どもを交互に撮影している姿が少し可笑しくもあり微笑ましくなる。
そんな光景を見て、いつになってもSLは子ども達・我々鉄道好きの夢であって欲しいと思った。
変わりゆく時代であるので、冒頭で書いたような問題も多く残されているが
SLが残っていくということは、展示物をただ見て回る博物館などとは違い、
ある意味動く歴史を体感するということでもあると思うので、なるべく多くの世代にこの魅力を体感してもらいたい。
子ども達に運転手が笑顔で手を振ると、車両はゆっくりと向きを変え倉庫に入っていく。
無事に入庫されるのを見届け、私は急いで駅舎内に隣接された蕎麦屋で食事を済まし、後に予定には入れていなかった益子へ向かう準備に取り掛かる。
そう、あのジョンレノンの叔母さんを追いかけて。。。
勿論、現地ではお会いする事は出来なかったが
いくつかの魅力溢れる陶器を見つけたので、その話はまた後日にでも。
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- 2018.12.29 (土) 19:25
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このコメントは管理人のみ閲覧できますプロフィール
Author:森田 涼花(もりた すずか)
26歳
H5 6/2 ふたご座 A型
吉原の多恋人俱楽部という店に在籍している森田涼花といいます。
大人の職業をさせていただいてますが、当ブログでは個人的な日常と趣味についてツラツラと綴っていくブログです。
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