山形鉄道 フラワー長井線の旅行記なのだよ。
第3セクターの経営はどこも厳しい。
実際に旧国鉄転換型31社のうち、経常利益、最終利益ともに黒字なのは鹿島臨海鉄道、愛知環状鉄道、信楽高原鉄道、智頭急行、平成筑豊鉄道の5社のみと言われている。
地元民の利用は限られていることから、我々のような都心の鉄ヲタを呼び寄せるため
鉄道会社も季節による限定列車やアナウンス兼乗務員を同乗させたりと
存続のため様々なアイディアや企画を打ち出すようになっている。
今回旅をした山形鉄道ことフラワー長井線もその1つ。
私は温泉と酒ですっかり火照った体を引きずり、ついでにちゃっかり売店で白ワインの小瓶を買って赤湯駅から乗り入れた。
名前の通り鮮やかな花模様がプリントされた列車がホームへ到着する。
最初に下車した駅は宮内駅。
この宮内駅では兎駅長の”もっちぃ”に会うことができる。
和歌山電鉄の”たま駅長”など猫の駅長はいくつか拝見したことがあるが
兎駅長というのは現在この山形鉄道だけではないだろうか。
そして、この存在こそが山形鉄道独自の目玉となっている訳だ。
元々路線上で白兎(しろさぎ)市を横断することから長井線には兎に関する神社や駅がいくか設営されている。
兎駅長就任の訳にも宮内駅から徒歩約15分の場所にある熊野大社という神社の存在が理由となっており
この神社、本殿の裏側にうさぎが三羽隠し彫りされており、三羽全てを見つけると願いがかなう語り継がれているようだ。
ひっそりと佇む駅員室と隣接された飼育部屋には、同じくポツンと寂しく兎が一匹。
元気がなさそうにじっとしたままその場から動かない もっちぃ。
小屋の横には「東日本の震災後、もっちい臆病になってしまいました」という張り紙があったが
それだけではなく、連日の暑さで兎も動く気力が無いように思えた。
ちなみにこの日の気温は東北といえども35℃を超える猛暑であり
少し冷房が効いている部屋とはいえども、これには兎もひとたまりもないだろうと思いながら、私も静かにもっちぃを眺めた。
兎といえども真夏の勤務が過酷なのは人間と一緒のようだ。
「お疲れ様です。」
心の中で呟きながら、いったん宮内駅を後にした。
当初の目的では、そのまま終点の荒砥駅まで乗車するつもりであったが
もう少し兎にちなんだ地を巡りたく、私は徐に白兎駅(地名は”しろさぎ”だが駅は”しろうさぎ”と読む)で下車をした。
噂によると、珍しい狛犬ならぬ狛兎がある神社があるそう。
駅名は可愛らしいものだが、見渡す限り周囲には田んぼしかない。
簡易的に作られた駅に2、3名で入るのがやっとなプレハブ小屋のような待合室があるのみであった。
当然下車した者は自分しかおらず、
1人異国に取り残された私は携帯の地図を頼りにすーっと伸びた地平線のような田んぼの間の道を
私は赤湯で買っておいた白ワイン飲みながら歩いた。
灼熱の太陽に照らされた過酷な道を笑顔で乗り切るには、酒にでも頼るしかない。
日に照らされキラキラと光る草。群衆のようにあちこちで飛び回るトンボを眺めながら
ワインをエンジンにしてぐんぐん目的地へひたすら歩いた。
25分ほど歩いた後に、田んぼの道は開け国道の大通りに出た。
そこから数メートル歩けば、、ひょっこりと狛兎が迎える葉山神社が姿を表す。
驚くほど静けさに満ちた神社には、小さな狛兎の手前に見合わないほどの立派なご神木が。
このご神木の正体は、日本三十三枝垂桜のひとつである樹齢約150年のしだれ桜であり
「白兎のしだれ桜」として市指定天然記念物にもなっているとのこと。
こんな田んぼの外れに天然記念物があるとは。
いい物がたくさん詰まっているのに世間から取り残されたような姿がどこかもの寂しく思いながら
埃やチリで薄汚れた本殿で参拝をした。
一体1日でどれほどの人がこの場所で手を合わせるのだろうか。
私はふと腕時計に目をやると次の鉄道の時刻を思い出す。
あと20分しかない。
行きに30分ほど近くかかってしまった田んぼの道を今度は全速力で駆け抜ける必要があった。
最後にもう一度狛兎に目をやると、
ちょうど西日に照らされてどこか優しい表情をしているように見えた。
その姿がなんだか”よく来たな”と歓迎されているようで
静けさの中にも優しい空間がゆっくりと流れているような気持ちになる。
また今度、この場所を訪れよう。
心にそう誓いを立てながら、慌ただしくその場を立ち去った。
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- 2018.10.30 (火) 13:40
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このコメントは管理人のみ閲覧できます- 2018.10.30 (火) 19:59
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Author:森田 涼花(もりた すずか)
26歳
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